医療現場の最前線で働く【看護師】からの報告~コロナ対策ニーズソン 2~
私は専門病院で働く看護師です。
まずは、私が勤務する病院の状況からお伝えします。
当院は、3次救急を受け入れる市中の専門病院で、3月上旬から新型コロナ感染疑いを含む患者さんの受け入れを始めています。当院には感染症専門医が在籍しておらず、感染症指定病床もありません。
今ちょうど一カ月半経ちましたが、私たちはハイケアユニット、集中治療室からもう1歩ステップダウンしたような、少し軽症の患者さんが入るようなユニットで、Covid-19疑い症例、Covid-19 症例を受け入れています。私たちはベッドサイドで対応していますし、救急外来も同じ管轄のユニットなので、救急外来でもこうした患者さんと接する機会が多いです。
ニュースでも話題のように、個人防護具は不足しています。我々の施設では4月に入った段階から、サージカルマスクは1人週に2枚の支給です。勤務状況に合わせて各スタッフは自分でそのマスクを管理するようにと、袋に入れて配布されます。
昨晩はコロナ肺炎の感染症を受ける病院で夜勤をしていたので、その時の様子を写真でご覧ください。
扉の前にあるのが実際につかえる個人防護具です。しかし「マスクがどこにある?」というくらい減ってきているのが実情で、N95も厚労省から「再滅菌推奨」という指示が出ていたので、今週から2回まで再滅菌するという算段で、ステラッドの袋に入れて回収を始めています。実際にベッドサイドで担当していて、いつこういったN95マスク、長袖エプロ、帽子、手袋がいつ無くなるのかという不安が常に付きまとっています。
入院中の患者さんがCovid-19に感染したという状況があります。その患者さんは基礎疾患がある患者さんで、人工呼吸器を装着中で重症だと想像してください。入院中の患者さんだったので濃厚接触のあった医師や看護師、職員数十名が現在、自宅待機中です。
そして感染拡大防止のため、入院の受け入れ抑制も開始しています。実際に1つの病棟は閉鎖となり、他の病棟も病床数を縮小しています。そして私自身も懸命な判断だと思うのが、Covid-19対策委員のトップの判断により、「予定手術は中止」となっている点です。こうした状況から、Covid-19 で医療を提供する側、そして医療を受けたい人たちの需給バランスの崩壊が始まっていると感じています。
求めているものは、PPEです。平時の医療で、普段であれば使用できるようなガウンやマスクや手袋など、PPEが今は不足しているため使い回していますが、これを止められるように必要なものが支給されるとありがたいです。
あと個人的にも気になるのは、職員の院内感染が起きた場合、年齢や性別、職種が明らかになり、メディアでのバッシングを受けていることです。これらを見ると、自分自身が感染することがすごく怖くなりますし、そこで個人情報が流出することへの恐怖もあります。さらに、現在はコロナウイルス感染症の患者さんに対応しているので、家族とは別居しています。元々自炊もしていなかったので「美味しいごはん」もままならない、心と体が休まる時間も確保できないという状況になっています。
今後も、この状況がいつまで続くか分からない、予定手術の再開や、閉鎖病棟の再開など、平時の医療をいつから提供できるのか、もしかすると今後提供できないのではないかという懸念もあります。
病等閉鎖や予定手術の中止により、手が空くスタッフも居ますが、重症の患者さんはいるので、医療資源の分配、スタッフの再分布やトレーニングなども必要な取組みになります。しかし、当院では具体的なことがまだ決まっていません。
もう一つ懸念していることが、院内の指揮命令を出す方、感染対策委員の委員長が仮にコロナウイルスに感染したら…ということです。指揮命令系統がその時点で崩れてしまいますので、ある程度「意思決定」ができる人は、いろいろな部門で勤務するなどの取組みも必要かもしれません。
くり返しますが、個人防護具の不足に非常に大きな危機感を感じています。一般病棟でも「陰圧個室」なら、個室かつ空調の関係でウイルスが外に出ないので良いのですが、陰圧では無い部屋でCovid-19に対応することになったとき、スタッフや他の患者さんに感染が拡がるのでは、という危機感も持っています。
平常の、通常通りの生活に戻りたい、妻や子供に早く会いたい、ここが切実なところです。
Covid-19は、本当に「災害」だと思っています。医療の質も生活の安寧も無い状況なので、みなさんで力を合わせて乗り越えていきたいです。
滋賀県出身。立命館大学文学部卒業後、専門学校でデザインとイラストを学ぶ。現在、滋賀県の印刷会社でグラフィックデザイナーとして入職し、個人でもイラストレーター・漫画家として活動中。また、NPOまもるをまもるの理事として、イラストや広報物の作成、グラフィックレコーディングを行なっている。趣味は英語の勉強とスターウォーズと、さんぽ。
【漫画】リアルな医療現場と、そこにあるバイアスモンスターと戦う作品『ソヴァージュ・モンスター』(原作:大浦イッセイ)の作画を担当しました。以下で読めます!
https://www.amazon.co.jp/dp/B07FK1YXG9/ref=cm_sw_r_li_awdb_c_7rYtBbQBMB503
●第2話 (リンク先で直に読めます)
https://share.clip-studio.com/ja-jp/contents/view…
岡部美由紀 (おかべ みゆき)
埼玉県出身。看護専門学校後、大宮赤十字病院(現 さいたま赤十字病院)に入職し、中央手術室に勤務。その後クリニック勤務を経て、なぜかIT技術者へ転身する。出産を機にIT業界に別れを告げ、看護師へ復職(ここでも手術室勤務…)。看護師10年、IT10年を経験し、自分には「何かをつくる」方が向いていると思い立ちライターへ転身、女性ばかりのライティング事業を立ち上げる。2015年から医工連携コーディネーターも兼務。
趣味は、ハンドクラフトとジグソーパズル。再び家族でキャンプに行ける日を待ちわびながら、犬&リクガメ&メダカの世話に追われる2児の母。