医療現場の最前線で働く【臨床工学技士】からの報告~コロナ対策ニーズソン 5~
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医療現場の最前線で働く【臨床工学技士】からの報告~コロナ対策ニーズソン 5~

世間的に今いわれているのは、Beforeコロナ、Withコロナ、Afterコロナ、3つの時代に分けて考えるべきということ。今がちょうど、Withコロナの時代です。
その中で私たち臨床工学技士が何をしているのか、機械の話と絡めてお伝えします。

臨床工学技師から見た人工呼吸器の課題

当院は3次救急病院ですが、指定感染症病院ではありません。しかし、周辺地域の指定感染症病院では人工呼吸器の実績やコロナ患者さんを収容する部屋の事情などから、当地区では当院が患者さんを受け入れる状態が続いています。当院の機械を置く場所、普段は人工呼吸器が20台くらいある場所には現在、すでに何もありません。すべて使用中ということです。

当院では通常、最新の人工呼吸器を使っています。しかし現在はそれが足りなくなり、別のメーカーの少し古いタイプの人工呼吸器を他院から借りています。最新機器はグラフィックユーザーインターフェイスもしっかりしていますが、今回お借りしている機械は非常にアナログなタイプです。インジケーターやLEDがあり、設定値はノブで回していく、細かい数値もノブの回し方、ちょっとした調整次第で変わってしまうような機械です。おおよそ15年前くらいの機械ですが、実際は隣の病院では現役で稼働しているような機械です。

同じ目的の機械でも作られた時代が違うものが、違う部署とはいえ同じ病院内で同時に使われている「違和感」があります。
使い勝手が違う同じ目的の機械が院内にはたくさん存在し、いざという時は同じ部署で使うことになります。しかし、病院内のDrやNsは機械の専門家ではありませんから、これらの機械を使うときに、1から使い方や確認の仕方を考えなくてはいけません。そこを私たちがサポートしていくわけですが、病院内のNs全員をサポートしきれません。
さらに台数が足りずにメーカーからお借りして3機種入ってきましたか、やはりユーザーインターフェイスが違いますので、また新しくNsへの教育が必要になってきます。つまり、さまざまな世代の機械が現役で使われているのが、大きな問題なのです。

病院の中にある感染リスク

病院内、感染のリスクはいたるところにあります。先日CDCの文献でもありました通り、患者さんのいる部屋の中、例えば床やノートPC、手すり、ベッド、個人の防護服、患者さんのサージカルマスク、医療者のN95マスク、それらすべての陽性率が高く、特に床からの陽性率は高いため、靴の裏から陽性反応が出ています。つまり、靴の裏から院内にコロナウイルスが伝播しているということです。

また、私たちの使うECMOなどの機械は使用後、すべて拭いていく必要があります。ただ、コード類が非常に多く、これらを一つひとつ拭いていく作業は時間がかかります。拭きもらしがあればそこから新しい感染リスクが生じ、患者さんにも医療者にとっても非常にハイリスクになります。
とはいえ、1台を拭きあげるまでに30分以上かかり、汚染領域からクリーン領域へ運ぶだけでも、非常に時間がかかります。

 

また、対コロナではなく「災害対策」に関する資料を見ても、全員が全身つなぎを着た対応をしています。実際にこうした対応ができるかというと、私たちの施設ではできません。元々、全身つなぎをある程度は持っていましたが、常に使っていたわけではないので納品の制限がかかっています。
実際に当院で私がとっている感染防御は、帽子、サージカルマスクにアイガードが付いたもの、そして長袖のガウンです。サージカルマスクの下にN95を付けて、できるだけN95が汚染されないようにしています。

ただ、コロナ患者さん受け入れに関しても、初めは帽子もしていない方がいました。良く見るとPPEをしていても背中はがら空きで、守れているようで守れていないPPEは結構あります。Nsが一人コロナ陽性になり、完全に閉鎖になった病棟もあります。

そして、病院の廊下にも感染リスクはあります。
院内で患者さんを別の病棟へ運ぶときは通るルートを決めていますが、感染症専門病院のように専用ルートがあるわけではありません。もともと職員も通るような道を、搬送路にしています。一応、車いすやストレッチャーを全部覆うようにしていますが、靴の裏などにコロナがいると考えると怖いです。職員が通るルートで1日に10人以上の患者さんを搬送し、その度に事務方スタッフが人払いをして通っていますが、その後で自分がその通路を通るのが非常に恐怖です。

病院職員以外にもある感染リスク

それから、病院内で使用するリネンは基本的に洗濯を外注していますが、回収する方は手袋とマスクのみです。リネンを2重の袋に入れていますが、やはり完璧ではないという不安感はあります。

 

PPEは、病院の中だけで不足しているわけではありません。例えば消防庁の知人曰く「コロナ患者さんを搬送する時にもそれなりの装備が必要」で、特に呼吸器やECMOを必要とするような方や、地方の病院へ搬送するような場合、搬送時に救急隊員が受けるリスクも非常に高いと思います。現在のところ救命士の分は用意がありますが、司令室などの方はマスクの配備もありませんが、司令室の方が居なくなると電話での調整もできなくなるので、救急体制は崩壊するでしょう。いわゆる事務方のところまではマスクも用意できず、病院もそうですが、しっかりした体制をつくるには事務方、調整行ってくれる方のところまで、サージカルマスク等の「市中感染を防ぐためのもの」を配備すべきと考えています。

当院でのPPEの現状

当院のPPEの現状は、地域の患者さんをまとめて受け入れているので、メーカーもだいぶ優先して納品してくれています。しかしコロナ以外の患者さん、例えば抗がん剤治療を受けている方などにも抗がん剤による暴露予防で使うため、そういう方への医療を継続するにも必要です。PPEは納品される週によっても内容が変わるため、今週は長袖が入らないので袖なしで、今週は少し余裕あるから長袖で、など、納品の波によって私たちの対応が変わります。N95マスクも使い回していて、CDCや厚生労働省からの通達に従って紙袋で保管していますが、非常に数が多いです。1人の患者さんでも職種を超えて非常に多くの医療者が関わりますので、N95マスクの形状が変わってしまうほどぎゅうぎゅうに詰め込まれています。これらのものについても、しっかりとした保管方法を検討する必要があります。

医療者と世間との間には、認識の「差」がある

例えば、東京駅など都心部は日中でも人が居ませんが、市部へいくと人があふれている状態です。ニューヨークでは100人に1人がコロナ陽性となり市民も非常に恐れています。
一方、東京の人も「怖い」といいつつ、実際の感染者は5,000人に1人くらいなので、情報に対する実感が伴っていない気がします。こうした認識の差も変えていく必要があるでしょう。

大きな感染症は定期的に起こっています。この流れは人類が続く限りずっと続きますが、それへの対策がしっかりできていないため、いつも同じことをくり返しています。この10年をみても、ジカ熱、デング熱、SARS、MARSと、世界的な流行(パンデミック)が起きています。これを他人ごとと捉えるのではなく、「次に未知の感染症はいつくるか」という対策も必要なのです。
今回のニーズソンの趣旨は「5年後ではなく、今できることを考える」ですが、東京にとっての「今必要なことやモノ」は今後、地方で必要になることです。これに対してできる体制づくりやシステム構築ができれば、と考えています。

 

Profile
イラスト:大道レイチェル(だいどう れいちぇる)

滋賀県出身。立命館大学文学部卒業後、専門学校でデザインとイラストを学ぶ。現在、滋賀県の印刷会社でグラフィックデザイナーとして入職し、個人でもイラストレーター・漫画家として活動中。また、NPOまもるをまもるの理事として、イラストや広報物の作成、グラフィックレコーディングを行なっている。趣味は英語の勉強とスターウォーズと、さんぽ。

【漫画】リアルな医療現場と、そこにあるバイアスモンスターと戦う作品『ソヴァージュ・モンスター』(原作:大浦イッセイ)の作画を担当しました。以下で読めます!

●第1話 Amazon Kindle (無料)

https://www.amazon.co.jp/dp/B07FK1YXG9/ref=cm_sw_r_li_awdb_c_7rYtBbQBMB503

●第2話 (リンク先で直に読めます)

https://share.clip-studio.com/ja-jp/contents/view…


文章

岡部美由紀 (おかべ みゆき)

埼玉県出身。看護専門学校後、大宮赤十字病院(現 さいたま赤十字病院)に入職し、中央手術室に勤務。その後クリニック勤務を経て、なぜかIT技術者へ転身する。出産を機にIT業界に別れを告げ、看護師へ復職(ここでも手術室勤務…)。看護師10年、IT10年を経験し、自分には「何かをつくる」方が向いていると思い立ちライターへ転身、女性ばかりのライティング事業を立ち上げる。2015年から医工連携コーディネーターも兼務。
趣味は、ハンドクラフトとジグソーパズル。再び家族でキャンプに行ける日を待ちわびながら、犬&リクガメ&メダカの世話に追われる2児の母。